先般、鉱物資源を保有する各国が鉱物資源の輸出戦略を見直し、鉱物資源を持たない日本は工業製品を生産し続けるリスクに直面した。とくに鉄鋼業・非鉄金属業など素材産業が受ける影響は少なからず大きく、今後このようなリスクへの対応を見直す機会になった。今回は「金属資源確保」「材料設計の元素戦略」という視点から現在の日本および世界が置かれている状況を振返り、これらの課題への取組み状況を概説する。さらに将来の子孫に負の遺産を負わさないためにも、現代の我々がすべきことを提案し、今後の将来展望を述べる。

他方で、我が国素材産業自体は、その事業環境や国際的な競争環境の面で多くの課題を抱え、決して安寧な状況にはないが、我が国製造業のさらなる発展を支えるために、引き続き技術的優位性及び産業として競争力を維持していくことが極めて重要である。かかる認識の下、政府においては材料に関する種々の技術開発や競争力強化のための政策を実施してきているところであり、本講座では、こうした最近の政策の動向を概説する。