2026年秋季(第192回)

第192回討論会テーマ

討論会の原稿枚数は、A4判4枚以内で作成願います。
ここにおける提案者は、講演大会において当該セッションの座長および副座長に指名されますので、ご了承ください。

1. 高温プロセス分野
「「水素富化高炉炉下部融体の滴下挙動可視化」研究会 中間報告」
提案者:大野光一郎(九大)

本研究会では、水素富化高炉における炉下部融体挙動の解明を目的として、滴下帯を中心とした現象の体系的整理に取り組んでいる。
近年の水素富化操業においては、還元挙動の変化や熱流比の変動に伴い、融着帯の形状・位置・厚みの変化が指摘されている。これにより、滴下帯から炉下部にかけての融体生成・流動挙動、さらには気・固・液の三相流動に新たな影響が生じることが懸念されている。
本研究会では、こうした背景を踏まえ、滴下帯における現象を以下の観点から整理・統合することを目指す。

・融体発生挙動(滴下開始条件・溶融過程)
・炭材挙動(水蒸気ガス化履歴を含むコークス特性変化)
・融体運動挙動(滴下・保持・流動特性)
・計算・モデル化による現象理解の高度化

また、従来高炉と水素富化高炉との比較を通じて、炉内構造および滴下帯の変化が炉下部挙動に与える影響を整理し、研究会としての共通理解の構築を図る。
本討論会では、これまでの分科会活動を踏まえた中間報告として、滴下帯を起点とした炉下部融体挙動の支配因子と未解明課題を提示し、今後の研究の方向性について議論する。

2. 高温プロセス分野
「カーボンニュートラル資源の利用拡大を目指した高炉用コークス製造技術「次世代環境調和型コークス製造技術」研究会 最終報告会」
提案者:鷹觜利公(産総研)
近年、鉄鋼業におけるカーボンニュートラルの実現に向けたCO2削減技術の構築は、地球規模の重要課題となっている。我が国では、高炉法を前提とした革新的製鉄プロセス技術の導入が、2030年代以降に計画されている。高炉法においては、高生産性および安定操業を維持するため、引き続き十分な通気性・通液性を確保できる高強度コークスが不可欠である。また、高炉におけるCO2排出削減を実現するためには、バイオマス等のカーボンニュートラル資源を利活用したコークス製造技術の確立が強く求められている。
本研究会では、前研究会である「資源拡大・省CO2対応コークス製造技術」研究会の成果を基盤として、バイオマス等のカーボンニュートラル資源の大幅な利用拡大につながるシーズ技術の探索および深化に取り組んできた。本討論会では、研究会メンバーによる研究成果の報告を行うとともに、その内容について討議を行う。また、本研究会の最終報告会も兼ねていることから、研究成果の今後の活用の方向性に関する議論も含め、参加者による活発な意見交換を期待する。
3. 高温プロセス分野
「日本鉄鋼業のカーボンニュートラル実現に向けた電炉・溶融炉技術の開発」
提案者:石渡夏生(JFE)
鉄鋼生産におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の高炉3社と金属系材料研究開発センター(JRCM)は「水素製鉄コンソーシアム」を結成し、多数の大学や研究機関とも連携して研究開発を推進している。
昨年は水素還元に関する開発について討論会を開催したが、今回は還元鉄・スクラップの溶解・精錬プロセスに焦点を当てる。
これらの溶解は高炉法と比べて、窒素・リンやトランプエレメントなどの不純物除去・低減が難しく、高級鋼の製造が困難と言われてきた。加えて、高炉法に代替し得る、溶解速度・生産性の向上にも課題がある。
今回、これら種々の課題に対して、基礎的検討・要素技術から、プロセスに即した課題まで、研究内容の紹介にあわせて今後の展望についても議論したい。
4. サステナブルシステム分野
「『鉄鋼カーボンニュートラル研究助成』による萌芽・先端シーズ技術の発展」
提案者:菊池直樹(JFE)、星野岳穂(東大)、村上英樹(科学大)
 日本鉄鋼協会では2022年度に「鉄鋼カーボンニュートラル(CN)検討会議」を設置した。本会議は、産業競争力を維持しつつ製鉄プロセスの「カーボンニュートラル」を実現するシナリオを、科学・工学の視点から議論する場として位置付けられ、現在も活発に活動を続けている。
「鉄鋼カーボンニュートラル(CN)検討会議」の下では、鉄鋼業におけるカーボンニュートラルに資する基礎検討の推進と、萌芽的・先端的シーズ技術の発掘を目的として、「鉄鋼カーボンニュートラル研究助成」制度を新たに設け、基礎研究や先端技術の発掘を支援している。
2022年の助成開始から3年が経過したことを受け、これまでに得られた成果を報告する場として、昨年秋に初めて討論会を開催した。多くの参加者から好評を得たことから、今年も第2回討論会を開催し、研究助成により生み出された鉄鋼業のカーボンニュートラルに資する萌芽・先端シーズ技術を紹介する予定である。
5. サステナブルシステム分野
「「鉄鋼カーボンニュートラルに向けた蓄熱技術」研究会 中間報告会」
提案者:能村貴宏(北大)

カーボンニュートラル(CN)の実現は、現代の鉄鋼業における最優先かつ喫緊の課題である。2025年、第七次エネルギー基本計画において史上初めて「蓄熱」の重要性が明記された。この「21世紀における蓄熱元年」に発足したサステナブルシステム部会「鉄鋼カーボンニュートラルに向けた蓄熱技術研究会」では、時間・質・空間的ギャップを超えたエネルギー利用を可能とする蓄熱技術を、CN実現のキーテクノロジーと位置づけ、研究を推進している。本研究会では、最新の蓄熱技術の進展を踏まえ、以下の3つの重要課題の同時解決を目指している。

① 徹底的な省エネルギー:未利用鉄鋼排熱の高度な回収と有効利用の追求
② 熱化学的CCU技術:エクセルギー再生型プロセスによる省エネとCCUの両立
③ 変動性再エネの導入:経済合理性を備えた再エネ電源活用のための革新的蓄熱システムの開発

各項目においては、単なる技術開発に留まらず、導入先の詳細な探索および「先制的ライフサイクル設計評価」に基づくケーススタディを実施し、その導入効果を多角的に検証する計画である。
本討論会は、当研究会の中間報告会として、現時点における成果を広く共有し、鉄鋼業における蓄熱技術の実装可能性を深く議論する場とする。産官学の各層から、活発な意見交換と知見の集結を期待するものである。

6. 計測・制御・システム工学分野
「3Dエリアセンシングによる製鉄所設備診断」
提案者:石井抱(広島大)、市川拓人(JFE)
製鉄所大型インフラ設備の安定稼働や点検・監視業務省人化を実現するためには、画像での広域3D微小振動・歪分布計測(3Dエリアセンシング)とシミュレーションが連携した、3Dデジタル再現による構造劣化の空間可視化を行うサイバー・フィジカル統合モニタリング技術の高度化が必要である。本討論会では広域サイバー・フィジカル統合モニタリング技術の高度化に関する最新研究を共有し、討論を行う。
7. 計測・制御・システム工学分野
「鉄鋼生産プロセスのエクセルギーフローとシステミック最適化」
提案者:諏訪晴彦(摂南大)
鉄鋼生産プロセスのエクセルギーフロー(物質およびエネルギーフロー)の効率化と需給バランシングは相互作用的かつ相乗的な性質を持つため、システミックな問題解決が重要となる。本討論会では、鉄鋼生産プロセスのエクセルギーフローモデルの開発と、エクセルギーの需給バランス・効率化の最適化に対するシステミックな問題解決アプローチを議論するとともに、カーボンニュートラルな生産管理支援技術の在り方を討論する。
8. 創形創質工学分野
「板圧延解析の最新動向」
提案者:柳本潤(東大)
板圧延の特性を解明するためには、被圧延材の応力場と変形の解明が必須である。本討論会では、板圧延解析の最新動向を紹介し、討論する。
9. 創形創質工学分野
「管製造に関するデジタルツイン化技術の現状と将来」
提案者:松本昌士(JFE)、水村正昭(呉高専)
鋼管は幅広い産業分野で用いられ、要求の寸法精度、機械特性などに応じて高度な造り込みが求められるため、製造工程ではDXやデジタルツイン化技術への期待が高まっている。本討論会では、可視化技術、シミュレーション技術、そして、データを活用した最適化技術について、デジタルツイン化の現状の到達点と、将来的な操業判断支援の可能性について討論する。
10. 材料の組織と特性分野
「マルテンサイト組織の科学と材料特性発現」
提案者:森戸茂一(島根大)
輸送機器のさらなる省資源・省エネルギー化要求を背景に、高強度マルテンサイト鋼の適用範囲は拡大している。しかし加工性の確保や水素脆性の抑止といった実用上の課題は依然として大きく、これらの特性はマルテンサイト組織と密接に関連するため、的確な組織制御が不可欠である。本討論会では、近年高度化する組織解析技術や組織形成モデリングを踏まえつつ、マルテンサイト組織形成機構と変形・破壊挙動の相関について多角的に議論する。基礎理解を深化させるとともに、高強度鋼のさらなる特性向上と産業応用への展開に資する知見の創出を目的とする。