2021年度事業計画(2021.3.1~2022.2.28)

2021年度一般社団法人日本鉄鋼協会事業計画(2021.3.1~2022.2.28)

日本経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)の影響から緩慢ながらも持ち直しの動きが見られるものの、弱さも見られ、総じて依然厳しい状況が続いている。海外経済は、感染症の拡大状況や経済対策等により国・地域ごとに回復ペースは異なっている。今後の経済情勢としては、感染症の再拡大のほか、米国大統領選挙後の行方、世界的な保護貿易主義の高まりや地政学リスク等のリスクが懸念されるところである。

我が国の粗鋼生産量は2020暦年では8,319.4万トン(前年比16.2%減)、世界粗鋼生産は18億6,398.0万トン(前年比0.9%減)となっている。この中で、中国の粗鋼生産は10億5299.9万トン(前年比5.2%増)であり、高水準の生産が続いている。

技術・研究面においても鉄鋼新興国の追い上げは厳しさを増し、生産能力のみならず、品質面、技術面、研究面でも向上が著しい。「ISIJ Int.」の国別論文掲載数に関しては、発刊以来わが国が常に第1位であったが、2018年には中国が初めて第1位(126件)となった。しかしながら、2019年および20年は再び日本が第1位(19年134件、20年194件)であり、世界のトップを自認する我が国としては今後とも産学官を挙げてその地位を維持・継続することが必要である。

大学では、鉄鋼研究のベースを確保することは喫緊の課題である。また、大学での人材育成への産側のニーズは高いが、大学教育の流れの中できめ細かい鉄鋼技術教育を期待することが困難な状況となっている。こうした状況の中、産学が問題を共有し、鉄鋼に係る新技術開発、人材育成、イノベーションを可能とする社会システムの改革を促進するべく本会の活動を進める。

これらを踏まえ、2021年度の本会活動としては、以下の項目等の実施に重点をおいた事業活動を展開する。

具体的な施策

1.協会基本活動の再活性化

  • 2020年度は感染症のため、学会部門、生産技術部門における各種大会、会議、セミナー等が中止または延期、オンライン開催となり、このため会員数が大幅に減少した。2021年度の最大の課題は会員数の回復であり、このため感染症対策を取りながら可能な限り協会活動を再開し、セミナー等の開催を図る。開催に際しては、最新のIT技術の活用による活性化、効率化を検討する。
  • 感染症対策のため第181回春季講演大会は3月17-19日にオンライン開催とするが、第182回秋季講演大会は9月2-4日に名城大学天白キャンパスにて開催する。

2.鉄鋼の学術・技術の活性化

  • 学会部門と生産技術部門との連携強化をベースとして、新しい研究課題の発掘・発信を図る。
  • 学会部門ではフォーラム活動や研究会の充実、理学等も含めた新たな学術シーズの取り込みを進める。
  • 生産技術部門では分野別の技術部会活動を中心に、機動的、弾力的運営を行い、特に若手技術者・研究者の育成に重点を置いた活動を進めるとともに、関連境界領域での課題にも取り組む。

3.人材育成

  • 学生育成事業については、「修士学生向け鉄鋼工学概論セミナー」、「学部学生向け最先端鉄鋼体験セミナー」、「企業経営幹部による大学特別講義」等の再開・開催を図る。
  • 企業人材育成については、「鉄鋼工学セミナー」、「同専科」、「アドバンストセミナー」についても、再開・開催を図る。
  • 2020年度に開催予定であった西山・白石記念講座が延期となったが、2021年度には開催を図る。
  • JABEE(日本技術者教育認定機構)と連携し、高等教育機関等の教育プログラムの改善・向上に貢献する。

4.他学協会等との連携強化

日本金属学会、日本熱処理技術協会等の学術団体との協力を推進する。さらにCOURSE50を推進中の日本鉄鋼連盟をはじめ、金属系材料研究開発センター、鉄鋼環境基金、鐵鋼スラグ協会、日本鋼構造協会、等の関係団体と研究助成、人材育成等の面での連携を継続・強化する。

5.政府の科学技術・産業技術政策への対応

  • 地球温暖化対策(日本鉄鋼連盟「ゼロカーボンスチールへの挑戦」)、社会インフラ整備等の国家的・社会的課題について、技術面からの対応について検討を進める。
  • 政府が推進中の構造材料関連技術開発プロジェクト(ISMA、SIP等)の円滑な推進に向けて協力する。
  • マテリアル革新力強化に向けた政府戦略策定のため、2020年10月に内閣府が設置した「マテリアル戦略有識者会議」に対して、本会としても情報提供等の協力を継続していく。
  • 本会からの情報提供によってNEDOが実施することとした2021年度先導研究「インフラの超高寿命化を実現する革新的材料・接合・寿命予測・予防保全技術の開発」に本会として引き続き協力・支援していく。

6.内外への情報発信力の強化等

  • 2021年11月に第6回国際鉄鋼科学シンポジウム(ISSS 2021)を京都で開催し、2021月12月に第1回地球環境のための炭素の究極利用技術に関するシンポジウム(CUUTE-1)を奈良で開催する。更に、2022年に向けて、第7回先進鉄鋼材料国際会議(5月つくば)、高温酸化・高温腐食国際シンポジウム、第1回鉄鉱石塊成鉱に関する国際シンポジウム(11月松江市)の開催に向けて準備を進める。
  • 日本学術振興会の科研費補助金の研究成果公開促進費(国際情報発信強化)に「鉄鋼論文誌の国際競争力強化」と題する取組を申請し、論文誌の更なる国際的プレゼンス向上を図る。
  • 2019年に冊子版希望会員への無償配布を開始した会報誌「ふぇらむ」について更なる内容充実を図る。
  • 協会に蓄積する各種研究・技術情報の電子化を更に推進する。