2025年度事業計画(2025.3.1~2026.2.28)
2025年度一般社団法人日本鉄鋼協会事業計画(2025.3.1~2026.2.28)
日本経済は、所得の増加、堅調な設備投資を背景に穏やかに成長が継続し、まだ一部に力強さは欠くものの、明るい兆しが見えてきている。一方世界経済は、成長の力強さを欠くなかで、米国新政権による米国ファーストの産業政策による米中対立の先鋭化とそれに伴う世界貿易・経済の混乱など不確定要素はあるものの、世界的な利下げ局面のなか、総じて回復基調を辿るとみられている。
我が国の粗鋼生産量は2024暦年では8,401万トン(前年比3.4%減)、世界粗鋼生産量は18.826億トン(前年比0.8%減)となっている。2025年度の我が国鉄鋼需要は、内外需ともに改善し、前年度から回復することが期待されている。
鉄鋼技術・研究面については、鉄鋼新興国の追い上げは厳しさを増し、生産能力のみならず、品質面、技術面、研究面でも向上が著しい。また、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど国際社会環境の急激な変化、気候変動や頻発する大規模災害に対応できるレジリエントな社会システム構築の必要など、鉄鋼業は多くの重要課題に直面している。
このため、鉄鋼業における革新的な技術発展が不可欠となっており、本会としては、学会部門と生産技術部門の連携をより強化し、鉄鋼の学術・技術をさらに活性化するための活動を進める。
これらを踏まえ、2025年度の本会活動としては、以下の項目等の実施に重点をおいた事業活動を展開する。
具体的な施策
1.協会基本活動の活性化
- 学会部門、生産技術部門および各委員会等の連携・協調のもと、各種大会、会議、セミナー等をより多くの参加者を得て開催するとともに、各事業の特色に応じWeb講演会などWeb/ハイブリッドの長所を活かした活動も進め、協会基本活動の強化・充実を図り、会員数の維持・増加を図る。
- 第189回春季講演大会は3月8-10日に東京都立大学南大沢キャンパスにて開催、第190回秋季講演大会は9月17-19日に北海道大学にて開催する。講演大会のさらなる活性化を図るとともに収支均衡を目指す。
- 論文誌「鉄と鋼」、「ISIJ Int.」は、完全オープンアクセスの学術誌として、国際的学術レベルの維持・向上を図るとともに収支均衡を目指す。
2.鉄鋼の学術・技術の活性化
- 学会部門と生産技術部門との連携強化をベースとして、新しい研究課題の発掘・発信を図る。
- 学会部門ではフォーラム活動や研究会の充実、理学等も含めた新たな学術シーズの取り込みを進める。
- 生産技術部門では部会間の情報交流促進を図り各部会活動の活性化に資する。各部会共通的な活動に加え、各部会の状況に応じ若手対象企画、産学連携、海外との交流等の活動を進める。
- 研究会Ⅰを13件(うち新規5件)、研究会Ⅱを3件、鉄鋼協会研究プロジェクト3件(うち新規1件)・FS1件を実施する。鉄鋼研究振興助成を28件、鉄鋼カーボンニュートラル研究助成を10件給付する。
3.人材育成
- 学生育成事業については、「修士学生向け鉄鋼工学概論セミナー」、「学部学生向け最先端鉄鋼体験セミナー」、「企業経営幹部による大学特別講義」等の実施・更なる充実を図る。また、高校生・高専生対象事業(①製鉄所見学交通費補助事業、②高校・高専生対象授業等への補助事業、③動画教材提供)についてはPR活動を強化する。
- 企業人材育成については、「鉄鋼工学セミナー」「同専科」、「鉄鋼工学アドバンストセミナー」の実施・更なる充実を図る。
- 西山記念技術講座・白石記念講座はニーズを踏まえたタイムリーな企画を進め、内容充実を図る。
- 会員向けWeb講演会は選り抜きの企画に重点化して実施する。
- JABEE(日本技術者教育認定機構)と連携し、高等教育機関等の教育プログラムの改善・向上に貢献する。
4.戦略・連携強化
日本金属学会等の学術団体との協力を推進する。さらに日本鉄鋼連盟をはじめ、金属系材料研究開発センター、鉄鋼環境基金、鐵鋼スラグ協会、日本鋼構造協会、等の関係団体と研究助成、人材育成等の面での連携を継続・強化する。特に地球温暖化問題については、鉄鋼カーボンニュートラル検討会議下のWG活動や助成事業等を他学会及び他業界との連携を強化し進める。また、産学連携強化の検討を進める。
5.内外への情報発信力の強化等
- 2025年9月に2025 International Conference for Analysis in Steel Industry (於:徳島)を開催する。
- 会報誌「ふぇらむ」について、更なる内容充実を図る。
- 2021年度より5年間の科研費交付を受けている「鉄鋼論文誌の国際競争力強化」の取組継続等により、欧文誌の更なる国際的プレゼンス向上を図る。
- 協会に蓄積する各種研究・技術情報の電子化及び利用を更に推進する。