第241回西山記念技術講座「先端鉄鋼製精錬プロセス技術における基礎と実践研究」(事前申込締切:2021年6月16日)

講座の視点

鉄鋼に関する学問は、いまだ絶え間ない進歩を続けている。その進歩はより細分化され、複雑化しており、専門性がより重要となっている。しかしながら、鉄鋼学の基礎を十分に会得せずに専門性を高めることはできない。また、鉄鋼の技術者にとって基礎学問から実践研究を一貫して学び直すことは、技術革新のきっかけにも繫がり、本技術講座の趣旨にも沿うものと考える。
そこで、中堅以上の技術者を対象に、凝固を含む製銑・製鋼プロセス分野における基礎学問から実践研究への展開を理解するための講座を企画する。各80分間の講座のうち、基礎の最先端を大学講師に60分間ご講演頂き、実践研究例を企業講師に20分間ご紹介頂く。なお、今回と同様の学び直しを趣旨として、2022年春に「鉄鋼材料」に関する技術講座を企画中である。
協賛:(50音順)
(公社)応用物理学会、(公社)化学工学会、(一社)軽金属学会、(公社)計測自動制御学会、(一社)資源・素材学会、ステンレス協会、(一社)電気学会、(一社)特殊鋼倶楽部、(公社)土木学会、(一社)日本機械学会、(公社)日本技術士会、(公社)日本金属学会、(一社)日本建築学会、(公社)日本材料学会、日本銅学会、(一社)日本塑性加工学会、日本中性子科学会、(公社)日本鋳造工学会、(一社)日本熱処理技術協会、(公社)日本分析化学会、(一社)表面技術協会、(公社)腐食防食学会、物質・材料研究機構、(一社)粉体工学会、(一社)溶接学会
1.日時
2021年6月30日(水)9:00~17:55
2.形式
オンライン開催(Cisco Webex Meetingsを使用)
3.内容および講演者、司会者
  • ※講演の概要はタイトルをクリックすると見ることができます。
  • こちらからダウンロード出来ます。
司会者:村上太一(東北大学)
1) 9:00~10:20
脱りんを中心とした高度精錬技術における熱力学

東京工業大学 科学技術創成研究院 教授 小林 能直
日本製鉄(株) 技術開発本部 プロセス研究所 製鋼研究部 主幹研究員 柿本 昌平

2) 10:20~11:40
状態図から読み取る製鉄プロセス中酸化物の状態

東北大学 多元物質科学研究所 教授 植田  滋
山陽特殊製鋼(株) 研究・開発センター 基盤研究室 プロセス研究グループ グループ長 吉岡 孝宜

3) 12:25~13:45
製銑反応の速度解析における未反応核モデルの実際

九州大学 大学院工学研究院 材料工学部門 准教授 大野光一郎
日本製鉄(株) 技術開発本部 プロセス研究所 製銑研究部 上席主幹研究員 中野  薫

司会者:大野光一郎(九州大学)

4) 13:45~15:05
凝固過程におけるマクロ偏析の発達

京都大学 大学院工学研究科 材料工学専攻 教授 安田 秀幸
日本製鉄(株) 技術開発本部 東日本技術研究部 主幹研究員 村尾 武政

5) 15:15~16:35
マルチフェーズスラグの流動を司る高温融体物性

九州大学 大学院工学研究院 材料工学部門 准教授 齊藤 敬高
日本製鉄(株) 技術開発本部 プロセス研究所 製鋼研究部 上席主幹研究員 内藤憲一郎

6) 16:35~17:55
熱流体・粒子シミュレーションで何が見える?

東北大学 多元物質科学研究所 教授 埜上  洋
JFEスチール(株) スチール研究所 製銑研究部 主任研究員 野内 泰平

4.講演内容
1)脱りんを中心とした高度精錬技術における熱力学
小林 能直、柿本 昌平
我が国の鉄鋼業の国際競争力の根幹を担ってきた高度精錬技術は、各元素ごとに発展し、また各濃度領域ごとに特徴的な指導原理を有しており、製品の高付加価値化および鉄資源の多様化などにも対応してきた。本講演では、不純物の極低減化、反応の高速化・高効率化、不純物含有鋼への対応の流れを振り返り、最大の課題である脱りん技術に戦略的指針を与える熱力学的な考え方について紹介する。スラグの脱りん能の評価指標である不純物キャパシティに着目し、キャパシティを増大させるためのファクター、種々のキャパシティ間の関係などを概説する。また、実際の脱りんプロセスにおける精錬技術展開について、CaO粉上吹き溶銑脱りんのスラグ組成やりん分配比の経時変化や、生石灰の溶融スラグへの溶解挙動に及ぼすP2O5の影響などについて紹介する。
2)状態図から読み取る製鉄プロセス中酸化物の状態
植田  滋、吉岡 孝宜
状態図は物質が安定に存在する領域を示すものであるが、高炉や転炉などの高温プロセスにおける酸化物は反応を伴い非平衡状態である。従って、これらプロセス中の酸化物の状態を知るには、系の最終到達状態の情報(の一部)をもとに、変化する酸化物を読み取ることが求められる。本講演では製銑・製鋼プロセスで扱う酸化物の状態とその変化を状態図から読み取ることを目指し、基礎的な2元系、3元系状態図の見方や、平衡状態図の測定方法、相の変化と状態図の関係について取り上げ、状態図等の使い方について説明する。
3)製銑反応の速度解析における未反応核モデルの実際
大野光一郎、中野  薫
冶金プロセスの設計や操作条件の決定では、プロセス内で起こる現象を的確に把握する必要がある。ところがプロセス内では複数の現象が共存しており、オフライン試験や実機計測などから得られる情報には限りがあるため、数値計算による解析が一般的に行われる。本講演では、製銑プロセスの数値解析に、最も一般的に用いられている「一界面未反応核モデル」を例として紹介し、その基礎学理を説明したのちに、応用例を紹介することで、製銑反応の速度解析の基礎から応用までを復習する。
4)凝固過程におけるマクロ偏析の発達
安田 秀幸、村尾 武政
凝固過程で生じるマクロ偏析は、鋳造後の加工過程や製品の品質に影響するため、限られたプロセス上のパラメータの中で抑制することが求められる。マクロ偏析の形成機構として固液共存域における溶質が濃化した溶鋼の流動を基礎に多くの研究がなされてきたが、固相の移動や変形も含めた固液共存域の変形に注目した研究も行われるようになった。本講演では、2D/3D観察結果も利用してマクロ偏析の形成機構を整理する。また、凝固・流動を考慮したシミュレーションによるマクロ偏析の解析についても紹介する。
5)マルチフェーズスラグの流動を司る高温融体物性
齊藤 敬高、内藤憲一郎
鉄鋼精錬プロセスにおいて副生されるスラグは基本的に均一な融体ではなく、未滓化のCaOやその反応生成物であるCaSや2CaO⋅SiO2-3CaO⋅P2O5および炭材などの固体、溶銑とスラグの反応により生成したCOガス等の気体、またフォーミングスラグによって巻き込まれた溶銑などの液体が、複雑に混在した高温複層流体を形成しており、これらが密接に関わる問題が散見される。ここでは、これらのマルチフェーズスラグの流動を司るレオロジー特性について、室温のモデルおよび高温におけるスラグでの測定例を概説するとともに、機械学習を用いた見かけ粘度の予測システムについて紹介する。また、スラグ中に分散した固相や気相などの第二相を、交流電場を用いてセンシングする技術についても言及する予定である。
6)熱流体・粒子シミュレーションで何が見える?
埜上  洋、野内 泰平
近年の計算機能力の向上に伴って、粉粒体を取り扱う鉄鋼プロセスに対して、粒子法による流動・運動解析の応用が拡がっている。従来の連続体を仮定したシミュレーションに対して、粒子追跡法は出力される情報は非常に膨大で、かつランダムな離散点の情報となるため、その中から必要な情報を読み解く作業が繁雑で、結果の評価は見た目の評価にかたよりがちである。本講演では熱流体・粒子シミュレーションの基礎と、その結果からいかに定量的な情報を読み解くのかについて概説すると共に、企業における実用例について説明する。
5.参加申込み
[申込方法]
事前申込は終了いたしました。
オンライン講座のため、本会ホームページからの事前申込のみとします。当日参加受付は行いません。
[支払い方法]
①クレジットカードのオンライン決済 または、②郵便振替のいずれかの方法で、事前の入金をお願いします。
[締め切り]
申込、入金ともに6月16日(水)までに完了するようお願いします。
  • ※開催約1週間前にメールにてログインに必要な情報(接続先URL、ミーティング番号、パスワード等)をお送りします。
  • ※入金の確認後、開催約1週間前にテキストと領収証を送付します。
  • ※ご入金後の返金および当日不参加の場合の返金はいたしませんので、ご了承下さい。
  • ※申込・支払い方法・オンライン受講についての詳細は、本会ホームページに掲載します。
6.受講の注意点
第241回西山記念技術講座は新型コロナ感染防止対策としてWeb配信により行います。
下記をご確認の上、申込をお願いします。

1)受講方法

  • 本講座は、Web会議システムCisco Webex Meetingsを使用して行います。
  • Webex Meeting使用に関する利用環境は受講される方に整えて頂くことを前提にしておりますので、受講申し込みの前に使用可能かご確認をお願いいたします。
  • 事前接続テストは開催日の1週間前に予定しています。

●受講マニュアル
聴講者マニュアル
Webex Meetingでの表示名変更方法

2)受講環境

  • ハウリング防止のため、イヤホン、ヘッドフォン、外付けマイクの使用を推奨します。

3)受講の注意点

  • 受信画像や発表資料の撮影・録画(画面キャプチャを含む)、録音、保存、再配布は禁止します。
  • 受講に必要なID、パスワード、接続先URL等は、参加申込された方のみ有効です。
    不特定多数を含む第三者に公開することはお止め下さい。不適切な接続が判明した場合、主催者側で切断する等の対応を取らせていただきます。
  • Web会議システムへの接続にあたっては(所属、氏名)を入力していただきます。
    (所属、氏名)は受講者相互に公開されます。正しく入力されない場合には、参加申込の確認が取れないことから主催者側で切断する等の対応を取らせていただきます。
  • オンライン受講に際して万が一トラブル等が生じた場合、日本鉄鋼協会は参加費の返却その他の責任を負いません。
7.参加費(税込み、テキスト付)
会員8,000円、一般15,000円、学生会員1,000円、学生一般2,000円
注)会員割引は個人の会員のみ有効です。協賛団体の個人会員、学生会員も含みます。
★テキストは、講座終了後残部がある場合、鉄鋼協会会員価格、一般価格で販売いたします。テキスト購入のお申込みは、本会HPをご覧下さい。
問合せ先:(一社)日本鉄鋼協会 育成グループ
E-mail: educact@isij.or.jp